ある男性(仮にAさんとします)から転職相談を受けました。
Aさんはメーカーのエンジニアとして20年働いてきました。
現在、4歳の息子さんと奥さんの3人家族。
大手のメーカーのため、年収は一般的な地方企業勤務よりもかなり多いけれど、長時間労働が常で仕事自体は嫌いではないものの、体力も気力も衰えていくのに、このまま60歳、65歳まで今の会社で勤務できる自信はないと言います。また全国転勤もあるため、いざ転勤になった際に何か転職にまつわる準備をしていたら、そこで行動できることもあるのではないか、とも思います。両親も高齢でどちらかというと地元を離れるという選択肢はとりたくないのが実情です。
ただ、転職といっても他にやりたいことがあるわけでもなく、また年収を考えると絶対的に低くなってしまうことは目に見えています。大きくはこの2つの理由で具体的な行動には移せずにいるのが現状です。
キャリコン的に言うと、あるあるなケースだと思います。
Aさんのお気もちは非常に良く分かります。
どうしたい?とかも分からないし、ない、という。
現在にひっ迫した理由もないので、このままいくとずっと現在の仕事を続けるでしょう。
それで50歳くらいで転勤となり、慌てる、というケース。。。。
いますぐ転職ではないけれど、今出来ることをする、というのが私の最初のアドバイスです。
では出来ることって何か?
①これまでの自分の棚卸。
特に、培ってきた磨いてきたスキルを言語化すること
②①で出てきたスキルを転用したら、どんな職業が出来そうか考える。
③インディード等で検索して具体的な仕事イメージをつける
こんな感じでしょうか?
20年も同じ仕事をしてきたら、その間にいろんな力を使って仕事をしてきたはずです。それはきっと本人も気づいていないレベルの力もあるでしょう。
例えば、こんなことがありました。
以前にハローワークさんの就職支援セミナーで講師をしていた際、ある50代の男性が質問に来ました。
「実は私、東京でフリーのテレビのカメラマンをしていたんです。親の介護で地元に戻ってきたのですが、同じ仕事はなかなかありません。でも長年この仕事をしてきたので、自分に他に何ができるのかなと思い当たりません。」
私はカメラマンの世界をそこまで知らなかったので、
「さしつかえなければ、カメラマンの日常のお仕事風景を教えてくれませんか?」と質問しました。
すると、男性はこんな話をしてくれました。
「私はフリーなので、毎回いろんな現場、局に行きます。そこで一つの番組をチームで作るんですが、毎回違うメンバーで初めて会う人たちが多いのですが、そんな中でひとつの番組を作る、ということを日常的にやっていました」
私は、このお話がとてもヒントになりました。
「ということは、毎回違う人たちと良い関係を早い段階で築いて、同じ目標にむかって一つのものを作り上げるということを長年やってこられたということですね」と。
ここだと思いました。
カメラマンそのもののの技術は、もちろんお持ちだと思います。
でも、この男性のこの仕事のやり方で培ってきた「早い段階で相手と良い関係を築く力」が必要な仕事はカメラマンの他にもたくさんあります。
言いたいことは、これまで培ってきた力を「応用する」「転用する」ことで転職がうまくいく可能性がある、ということです。
結果、その男性は次に講座にいらした際にこう言いました。
「先生、ぼくあれからいろいろ考えました。で、介護の仕事に応募しようと思います。これまでの仕事で使ってきた力を転用するという考え方がとても参考になりました」と
棚卸や自己理解ということは、よく言われることです。
でも、何を棚下すのか、どう自己理解するのか、そこがとても大事だと思います。
最初に出てきた、48歳の男性Aさんも、この考え方で、やりたいことというより、できること、を探したほうが近道かなと思います。